親知らずを抜いた。
3本目である。残りはあと1本。
何故【親知らず】という名前なのか調べてなんとも言えない気持ちになった。
去年の年末、左上の口内が痛くなり、年末だし歯医者怖いし知らんふりをして過ごしていたけど、家族全員からとりあえず歯医者に行けということでとりあえず気合いの予約を取った。
原因は生えてきた親知らずが口内に当たって少し化膿していたとのこと。しかもレントゲンを撮ると4本全ての親知らずが存在し、全て良くない生え方をしていると。
全く知らなかったのだけれど、真っ直ぐ生えていれば特に抜く必要のない歯で、横向きに生えていると他の歯に影響があるらしい。
左上の痛くなっているところは、生えきっている(生えきっている？)のでうちでも抜けますが、残りの3本は歯茎の中なので、骨を切る手術になり、口腔外科を紹介しますとのこと。
骨を切る？そんな熟語あった気がするな。というかなにそれ怖くなってきた。
とりあえず左上を抜く予約をし、その日は帰宅。
予約の日が来て、どきどきしながら待合室で名前を呼ばれるのを待つ。
待つ時間が一番怖い。一番簡単に抜ける親知らずの日でもこんなに怖いのに、口腔外科の予約なんて取りたくない。
とうとう名前を呼ばれて、あの白いリクライニング付きの椅子へ向かう。
はい少しチクっとしますね~と言いながら麻酔を打たれ、ゴリゴリと音がして、ミシミシという音になったら怖くなって先生の手を掴みかけた。
大丈夫ですか~終わりましたよ~
と言われて、え、嘘、と思ったら少し細長い歯がシルバーの器の中にコロンと入っていた。
なんか痛かった気もするし怖い音もしたけど、思ってたより早かった。このテンションのうちに口腔外科の予約も取ってしまおう。ということで、紹介状を書いてもらい総合病院へ電話。
が、総合病院の忙しさを知らず、検査の予約だけでも1ヶ月後になった。駄目だ…待つ時間が長すぎてどんどん嫌になる…
やっと検査の日になり、前もしたけどな~と思いながらいろんな写真を撮ってもらい、抜歯の日を決める。リスクの話は必須なので丁寧に説明してもらうけど、もしもの話が怖すぎる。
残り3本。辛いのは嫌なので一気に全て抜いて欲しかったが、右側か左側に分けて抜かなければいけないらしい。
そして血圧が低いらしく、血圧計、心電図を取りながら抜歯しますねとのこと。
とりあえず嫌な思いはできるだけ先に終わらせたいので1ヶ月後に右側2本抜いてもらう予約をした。
ここから1ヶ月…また待ちの恐怖の1ヶ月…
その間に、人に聞いたり、調べたりしてしまう。下の親知らずは特に痛いらしい。
どんどん恐怖に陥りその日が来るのが憂鬱に、でも早く終わって欲しい気持ちもありつつ、え、まだこれ抜いた後ももう一回抜きに行かなあかんねんな…全部嫌。
ついに決戦の日がやってきた。2本抜歯手術をする日。前日の夜は、肉も魚も卵も食べて精をつけ、当日の朝はいつもコーヒーだけのところ、白ごはんとお味噌汁を。
意外と緊張してないなと思いながらも、病院に着いて受付したあと、心臓のバクバクが止まらない。ついに名前が呼ばれ、この総合病院にもある白いリクライニング付き椅子に着席。
パーテーションをしているが、右側はおじいちゃん、左側は全身麻酔して何か歯の治療をし終えた人がいるっぽい。
右側からは、先生と、看護師数人の大きい声でなだめる声とおじいちゃんの叫び声…
え、これを聞きながら抜歯…?
「お願いやから口開けて！！血まみれになっちゃうから！！ご飯美味しく食べれないよ！！！」
の声に
「嫌や、怖い、」
ガガガガｯ
「あ”ーーーー！！ーー！！！、！！！」
を繰り返すことおよそ5回以上。
気になって気になって、私の腕と足に心電図をつけられると鼓動がめちゃくちゃ早い。
「お願い、ちゃんと口開けてーーー！刺さって痛くなっちゃうから！！」
「嫌や阿保ｩ！！！！！！」
(阿保…?)
「そんな言葉遣いしちゃだめよ〜、阿保でもいいから口開けてーーーーはーーーい上手、そう！！」
「あああああ”ーーーー怖いいいい」
ﾋﾟｯﾋﾟｯﾋﾟｯﾋﾟｯﾋﾟｯﾋﾟｯ(私の心電図)
「痛くなるようなことしてないよーーー掃除してるだけ！！！」
(え、そうなん…?)
と気を取られているうちに自分の口の中へ麻酔が始まる。
深呼吸しながらも、ついに来たか…という気持ちと、右横のおじいちゃんが気になる気持ちと。
麻酔が効くまで少し置きますね~とのことでリクライニングが倒され顔に布をかけられて待っていると、次は左側から
「あ、起きた~！！」
「「「笑ってる~~~！」」」といろんな歯科医の声が。
何が起こってるんやろう、でも無事っぽい…と思ったら
「え、自分で歩いて行くの、？！まだ麻酔残ってるからちょっと待って！」
の声
え、なにそれどういうこと？と思いながらも私の抜歯手術が始まってしまった。
途中までは、意外といける、とか思ってたものの、顎が外れるかと思うくらい何度も引っ張られ何度か挙手…切られる感覚はわからないし口の中は痛くないけど、顎が痛い。
すぐ終わるやろと思ってたけど、全然終わらず、器具の音が永遠と頭の中で鳴り止まず、そのあとは顎を外されるかと思うような動きの繰り返し。
もう顎が限界を迎えると、歯のプロの先生はそれを察して口を半分閉じていいよと言ってくれるそのままゴリゴリと…
どれくらい時間が経ったのか、終わりましたよ~お疲れ様でした~明るくなりますねと視界が白くなる。今からの過ごし方や処方箋についての説明を受け、待合室へどうぞと言われる。
あれ、両隣居ない。時計を見ると部屋に入った時から1時間半経過している。私だけになってたのかこの場の患者は…確かに後ろで研修生とかが見学してた気配が途中であったな…4月だな…
とか思いながら待合室に戻ると、喉に溜まった血液で気持ち悪くなり大粒の涙が流れた。
「抜いた歯、記念にもらっていいですか」
と絞り出した声で言い、小さい袋に詰めてもらった。表には出てこれなかった私の一部…
パートナーは平均的な人より歯が6本足りないし、かつ乳歯も2本残ってるらしいのであげられたらいいのに…と思いながら鞄にしまう。
残すはあと一本…辛すぎて歯を抜いた帰りに徒然と書いた。
そして今日は抜歯から一週間後（といいつつ当日ブログ更新ならず現在その5日後）、糸抜きの日。抜歯後、頬は最高に腫れて、その後殴られた後のように真っ黄色になった。想像以上に辛い日々。
食べることが好きな私にとって、口が開かないこと、噛めないこと、飲み込むことが痛いこと、全てが修行だった。そして自分の食への貪欲さにも我ながらびっくりした。
流動食しか食べれない日々、わたしはどうしても、どうしても小麦が食べたくなり、スーパーで柔らかそうなシュークリームを買い、家に着くなりすぐ袋を開けた。
一口サイズにちぎってカスタードをすくい、口に入れようとするが開かない。痛い。
無理やり押し込んで左側から飲み込む。ひとりでシュークリームひとつに20分ほど向き合い口の周りをベタベタにしながらなんとか食べ終えた。必死すぎて正直美味しかったのかわからない。けど満足感でいっぱい。ひとりで可笑しくて笑えてきた。歯磨きも大変なのに。
過去最高に長いブログになってしまった気がする。そして、辛すぎるのだけれど、私の抜歯修行はまだ続く… 人は経験した痛みに慣れることができるのか…乞うご期待。
